それは、弱肉強食とは趣が違うが、
畑における「モノには順番がある」という点では、少し似ているかもしれない。
畑の掟。
それは、後進に、道、ならぬ、畝を譲る、という事なのだ。
先だって、トマトの木を始末した。
雨降りの間、青い実を幾つもぶら下げていたトマト。
やっと雨が上がり、その実を赤く色付かせた頃には、
もう秋の足音がしていたのだ。
まだ、トマトの木は、生きていた。
だが、その木に、もう赤い実がぶら下がる事はなさそうであった。
既に春採りニンジンの植え時を逃しそうになっていた。
トマトの木は、生きていた。
しかし、ニンジンを植える畝は他に無く、私は決心をしなければならなかった。
私の手が届かないほどに背が高くなったトマトの木だった。
支柱としっかり結び付けてある麻紐を解きながら、
枝を切り取ったり支柱を抜いたりしながら作業を進めた。
私のように覆いをかけないで植えていたトマトにとっては、
今年の雨続きは災厄のような夏だったであろう。
本領を発揮できないまま、
太陽の光は秋の穏やかな日差しに変わってしまった。
こんな穏やかな日差しでは、もう、トマトが赤く色付くのは無理だろう。
ぎらぎらとした夏の激しい日差しを浴びせかけられて、
トマトはこってりとヘタのぎりぎりまで赤くなるのだ。
トマト以外の畝にニンジンを植える検討は勿論した。
だが、プチヴェールをこのあいだ植えた畝や、

ピーマンの畝や、

やっと巻き返しを見せているパプリカや、

バジルは終わったけれど、綿の花が咲いている畝や、

まだまだこれから赤くなる鷹の爪の畝や、

あとは、昨シーズンにニンジンを植えていた畝で、
連作は避けたいので、コレもダメだった。
シソがめいっぱい生えている畝と、
カボチャがうじゃうじゃしている畝と、
マリーゴールドが大きく株を作っている畝も、やはりダメだ。
ここは、掟に従って、トマトに後進へ畝を譲ってもらうしかない。
太陽を求めてひょろひょろと伸びたトマトが気の毒であった。
夫が本宅から借りてきてくれた棒では足りなくてトマトが倒れ、
私はホームセンターでもっと太く長い棒を新たに購入したのだ。
よし。
この棒を使って、来シーズンもトマトを植えるのだ。
今年のトマトの雪辱を果たそうと思う。
始末したトマトは、畑の隅に適度な長さに切って積み上げた。
直に他の枝が上に重なり、その内に朽ちて土に還る。
バジルやシソやコリアンダーや、カボチャの蔓や、
色々なモノと一緒に朽ちて行く。
そして、それを分解した微生物と共に、
畑を豊かに育てていくのだろう。
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